遺言の準備で相続トラブル回避。相続における遺産の分割方法
今回も前回に引き続き、相続時の問題点についての紹介です。
前回は「一次相続」と「二次相続」のことについてお話いたしました。
前回の内容はコチラです。
不動産の遺産相続でモメないために|親から子供への家屋・土地相続はなぜ紛争になるか?
今回は「相続における遺産の分割方法」をご紹介いたします。
相続が発生すると被相続人(亡くなられた方)の財産(遺産)は、遺産分割協議がまとまり、誰がどの遺産を相続するのかが決まるまで、一旦凍結されることになります。
ですので、被相続人の預金を引き出したり、きちんとした手続きを取らないで被相続人名義の不動産を売却したりすることができなくなります。
この点は非常に重要なので、皆さんご注意くださいね。
もし、勝手に預貯金を引き出し、それが原因で他の相続人と争うようなことになると、相続人として不適格であるという判定をされ、遺産分割協議において不利になることがあります。
なので、遺産分割協議が整うまで、相続人は亡くなられた被相続人の財産(遺産)については、一切手をつけないように気を付けましょう。
そのうえで、お葬式などの費用を立て替えた分については、遺産分割協議の際にきちんと差し引いてもらうよう、領収書などの資料をおいておくようにしましょう。
遺産分割協議では、被相続人の遺産の全てを表記し、誰がどの遺産を相続するのかを決めていきます。
この時、事業などを行っていない一般的なご家庭において、分割するのが難しいとされているのは不動産です。
一方、遺産が預貯金や上場されている株式などであれば、分割は比較的簡単に済みます。
もめる不動産相続。売却せずに住み続ける、保有するとややこしくなる
例として、二次相続で相続人がお子様3人(長男、次男、長女)、預貯金が1,000万円、株式が500万円、一戸建て住宅(自宅)が遺産の全てであった場合、4,800万円までは相続税は非課税となります。
(ここではマイナスの財産や生命保険等はないものとします。)
とすると、一戸建て住宅が3,300万円以下であれば相続税は非課税となりますが、それ以上ですと相続税の申告の対象となります。
一戸建て住宅で3,300万円と考えると、一般的な一戸建て住宅の価格と大きく変わらず、それほど高額ではないことから、相続税の申告対象となるケースは意外に多いのではないかと思われます。
(実際には生命保険や、死亡退職金、ゴルフ会員権、貴金属(宝石や絵画など)も含まれるので、もっと計算は複雑になります。)
ここで、一戸建て住宅について、相続人の誰もが必要ではなく、売却してしまおうと考えるのであれば、売却したお金を3人で分ければよいだけなので大きな問題とはならないかと思います。
問題は、相続人3人のうちの誰かが、この一戸建て住宅に住みたい、または保有しておきたい、と考えた場合です。
相続は、全ての相続人に平等に権利があります。
そのため、これらの遺産を平等に分けようとすると非常に難しくなります。
例えば、一戸建て住宅の価格が3,500万円であった場合、遺産総額は5,000万円となり、
各相続人は約1,666万円ずつ相続する権利があります。
そうなると、一戸建て住宅を相続する人は、他の相続人に対し、1,666万円ずつ負担しなければなりません。
遺産は預貯金と株式で1,500万円しかありませんので、残りの1,832万円のお金をどこからか用意してこなければならないのです。
こういったケースでは、長男が両親と同居されており、そのまま自宅に住み続けたいと思っていても、お金が用意できなければ、住み続けるのが難しくなります。非常に残念なことです。
では、どうすればこのような問題は防げたのでしょうか?
相続発生前に遺言を準備する。費用はかかるが効果は大
まず、考えられるのは「遺言」です。
両親と同居されている長男が一戸建て住宅である自宅を相続するように指定しておき、他の相続人の方々には、その他の遺産を相続するように指定すればよいのです。
ただ、この時に考えておかなければならないのが、「遺留分」です。
「遺留分」は、相続人がお子様であれば相続できるはずであった遺産の1/2になります。
今回のケースでは、1,666万円の1/2なので、833万円ずつとなります。
これであれば、生命保険等の方法で外に166万円を用意するだけで、長男は自宅に住み続けることができます。
このように、相続は少し気を付けて準備をしておくだけで、大きな問題とならずにスムーズに相続できることがたくさんあります。
もちろん遺言を用意するのは、ある程度の費用はかかりますが、後々のことを考えると、例え費用がかかっても、それ以上の効果はあるように思います。
相続は発生してしまうと何の手だてもできません。
発生する前の準備が非常に重要なのです。
また、今回は一戸建て住宅の価格を3,500万円と決めましたが、この不動産の価格についても問題となることが多くあります。
今回のように他に比較できる一戸建て住宅などであれば、まだ査定しやすいのかもしれませんが、これが「借地権付建物」であったり、「賃貸用アパート」であったり、「田畑」や「山林」「資材置場」などの場合、正確な価格を把握するのは難しくなります。
不動産の価格は一般の方々にはわかりにくく、説明しにくいものです。
実際に相続する不動産の価格が、曖昧であるために紛争となるケースも多くみられます。
そこで、次回は、「相続税における不動産の評価額」についてお話したいと思います。