不動産の評価額について、相続税を払い過ぎないために
今回は「相続における不動産の評価額」についてのご紹介です。
相続税にかかる「土地」の評価は、原則として「宅地」「田」「畑」「山林」などの地目ごとに評価を行います。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
今回は路線価方式をご紹介いたします。
路線価方式とは?
路線価方式とは、路線価が定められている地域で有効な評価の方法です。
路線価とは、各路線(道路)に対し設定されている1㎡当たりの価額のことで、千円単位で表示されています。
ちなみにこの路線価は不動産鑑定士が国税局からの依頼に応じて、標準となる画地等の価格を鑑定評価し、その鑑定評価額を参考として決められています。
私も不動産鑑定士として、堺市の相続税路線価評価業務に携わっているので、毎年、この路線価について検討しています。
路線価図は国税庁のHPに公表されているので、どなたでも簡単に見ることができます。
一度、ご自宅の路線価がいくらなのか確認してみてください。
【参考】財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
ここで注意すべき点として、
路線価は標準的な宅地、すなわち整形地で間口が充分に取れている優良な土地を想定して設定されているため、標準的でない宅地である場合、例えば奥行が長い、不整形地、角地等の場合はそれぞれの要因に応じて補正を行う必要があります。また、この補正率は、ビル街地区、高度商業地区、普通住宅地区、中小工場地区等、存する地域によっても異なります。
したがって、路線価方式における土地の価額は、表示されている路線価を、対象となる土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算することにより求められます。
例えば、普通住宅地区に存する奥行25mの自宅の敷地300㎡の接面する道路の路線価が、「200」と記載されている場合、その路線の路線価は200,000円となり、奥行価格補正率は0.99となります。
この土地についての評価額は、
200,000円×0.99×300㎡=59,400,000円となります。
【参考】奥行価格補正率表
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/02/07.htm
このように、実際の土地の評価に当たっては、路線価による評価額に基づき、それぞれの宅地の形状や接道状況、周辺の地域の状況、利用状況等を考慮して行うことが重要となります。
そのため、所有されている土地が標準的な宅地でない場合、様々な補正が必要となるため、評価額の算出は難しくなってしまいます。
【参考】財産評価 基本通達
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/01.htm
不動産鑑定士が評価を行ったほうが評価額が低くなるケース
しかし、このときにこれらの補正率では対応しきれない個別性を有する場合が問題となります。
下記のような場合には、設定されている補正率以上の減価が認められる場合があるため、財産評価基本通達による評価額よりも、不動産鑑定士による鑑定評価を行った方が、評価額が低くなるケースが多くなっています。
例
①大規模な画地(500㎡以上)→広大地の判定
②無道路地や建築基準法上の道路に接面していない利用が困難な土地
③がけ地や高低差等の傾斜の強い土地
④土地汚染等の阻害要因がある土地
⑤奥行が異常に長くバランスが悪い土地
⑥形状が悪く利用効率が劣る土地
⑦間口が2m未満の土地
⑧市街化調整区域に存する雑種地
⑨田、畑、山林
⑩私道
⑪土壌汚染、埋蔵文化財、地下埋設物が存する土地
などなど・・・。
相続税における財産の評価は、原則「時価による」とされています。
必要のない相続税を払わないために、不動産鑑定士に相談を
しかし、国税庁では、時価評価の画一性や迅速性、簡便性のために「財産評価基本通達」を制定し、「財産評価基本通達によって評価したものが時価である」としています。
この「路線価方式」は不動産の評価について専門ではない税務当局の職員や税理士が評価しやすいよう、比較的簡便な評価手法となっています。
そのため、個別性を有する不動産については、対応しきれていないのが原状です。
画一的な「路線価方式」では個別性の減価に限度があり、市場性が反映されず、結果として客観的な「時価」よりも高くなってしまうことがあるのです。
この点について、土地の相続税の申告においては、財産評価基本通達に基づく路線価評価で算定した価格が、適正な時価を大幅に超える高い評価額となる場合には、相続税法上の「時価」として適切であるか否かについて適正な判断を行うこととされているため、必ずしも路線価評価による価格で申告しなくてもよいと考えられています。
残念なことに、相続税の申告においては、高い評価額を算出し、高い相続税を申告してしまっても、国税局からの指摘はありません。
逆の場合は指摘されますが・・・。
したがって、皆さんの注意が必要となります。
支払う必要のない相続税を払ってしまうことのないように、
不動産のことは、ぜひ不動産の専門家にご相談ください。